映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

白石和彌監督「凪待ち」2991本目

たまたまお話をした人が、この映画のエキストラをやったと言っていたのを聞いて、どこに出てるかわかるかな?と思ってふたたび見てみました。

エキストラが出てるとしたらお祭りの場面だろうな。(スナックの客の役もありうるけど)浴衣を着ていたり着ていなかったり、慎吾くんの両脇を通りすがる周囲の人たちは暗がりの中でぼやけていて、誰が誰かは本人でなければわからないなぁ…。

改めて見てみても、やっぱりわびしーい気持ちになるなぁ。最初に見たときは「SMAPの香取君(一番若くて愛嬌たっぷり)というイメージで見てしまったけど、改めて見ると、こんなロクデナシもいるのかもなぁという気持ちになりますね。最初に見たときは、香取君に対して私が持っていたイメージに縛られすぎてたかな、と今は思うのでした。 

凪待ち

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滝田洋二郎監督「北の桜守」2990本目

<結末にふれています>

吉永小百合が過去の映画について語るインタビュー本を読んで、見てみたくなった1本。この映画は、インタビューと公開時期が近いので、制作裏話なども詳しく書かれていました。「北の」シリーズは吉永小百合自身がプロデューサーのような役割もつとめてたようですね。反戦の気持ちが強く、人情あふれる世界を愛する人だと思うので、このシリーズができたんだな。役どころについては、本人が「この年では無理」というのを監督が「戦時中のお母さんは若くてもくたびれていたから大丈夫」と説得したとのこと。阿部寛と夫婦の時期は少しだけで、すぐに実年齢に近い年代に移行するのですが、もうちょっと引きで撮ってもよかったんじゃないか、とは思います。

途中、あまりに悲惨な場面は舞台上で演じるミュージカル仕立てになっていると書いてありましたが、その辺も含めて脚本家とよくよく話し合って作ったようです。前年に吉永小百合自身が網走で流氷を見て、ぜひここで映画を撮りたいと切望して、撮影の際は漂着するまで何日も待った、とか。北海道への思いは特に強いみたいですね。

だんだん、年齢を重ねて、あと何本撮れるかと考えるようになると、なるべくやりたいことをやろうと思うんだろうな。戦争を語ろうとすると、よほどリアリティを追求する強い気持ちがなければ、どうしてもデフォルメしてしまいがちだと思います。私は、伝えたい「気持ち」のほうを重視する映画をいつも「ファンタジー」と呼んでますが、これもまた一種のファンタジーとして見れば、伝わってくるものもあるんだと思います。

行方不明の2年間の後、とうとう白髪になった吉永小百合。どこにどうやってたどり着いたのか、謎。もしかして、バス停を後にするところで本当は終わるはずだったけど、結末を取ってつけたんだろうか?最後の最後の舞台は、「アンダーグラウンド」で最悪の悲しい事態でもう夢をみるしかない、という感じで踊りだすのを思い出しました。

気になったのは、あんなに美味しそうなおにぎりを買う人がまったくいないなんて、リアリティなさすぎるな~っていう点かな?(まるで本筋と関係ない)

北の桜守

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深作欣二監督「華の乱」2989本目

深作欣二監督がこんな文学的な作品も撮ってたんだ。吉永小百合のインタビュー本を読んだら見たくなってしまったんだけど、彼女が与謝野晶子を演じるって斬新だなぁ。まっすぐすぎて不倫とか絶対しなさそうな女性ってイメージなので。

ちょっとヨゴレた感じの女性を演じていて、リアリティもあるのに、なんとも清潔で綺麗ですね。このとき43歳かぁ。

松田優作が恋の相手って、年齢差は?と思ったけど、吉永小百合より4歳年下なだけなんだなぁ。彼は大人になってから映画に出るようになった人だから、デビューの時期が何十年も違っているけど意外と近かったのか。彼が演じた有島武郎の心中相手を池上季実子(「HOUSE」の美少女から11年後だ)が演じていて頭が混乱してきます。

映画のなかには、与謝野鉄幹&晶子のほかに、大杉栄&伊藤野枝、有島武郎&波多野秋子といった男女もからんできて、はかなく時代に巻き込まれて散る人も多いけど、与謝野晶子は生き延びたところが素敵な気もします。

人にどう思われるか、を後回しにして、自分の思うままに生きようとした、ある意味動物のような人たちがなんだか美しく思えるのでした。

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牧原亮太郎 監督「屍者の帝国」2988本目

フランケンシュタインだから、ゾンビじゃなくて「屍者」なんだ、今回のテーマは。面白そうじゃないですか。絵も美しいし、嫌いじゃないなぁ、この世界。設定がグッときますよね、伊藤計劃の作品は。わずか2.5長編しか残さなかったけど、これハリウッドでCG実写リメイクしてもいいと思うし、名作は使いまわされて長く愛されるはず。

しかし登場人物の名前があからさまですごいな。主役がDr.ワトソン、彼が蘇らせた美少年がフライデー、フランケンシュタイン博士、アレクセイ・カラマーゾフ(「カラマーゾフの兄弟」の主役の名前)とクラソートキン(同じく主役の親友)。主役級の名前をポンポン使うのは、日本ではそれほど外国の名著を誰でも読んでるわけじゃないから、それほどあからさますぎない、って判断かな。「インセプション」でクリストファー・ノーランがアリアドネと名付けた女の子はギリシャ神話の迷宮の中で英雄を導いた女神の名前、みたいな話もあるので、まあいっか。

死んだような眼をした(屍者だから)フライデーの、フラフラしたキャラクターが面白くてだんだん可愛くなってきます。これは映像だからこその楽しみですね。

しかし、面白いのになんとなく見てる自分が中だるみしてしまうのは、アニメだと緩急の「緩」がわかりにくくて、ずっと緊張してると途中で疲れてしまうからかなー。

最後なんかBLみたいだったけど、フライデー君がやっぱり最高だったな。。。

なかむらたかし監督「ハーモニー」2987本目

割と面白かったよ。

「虐殺器官」のほうは、原作を読んでたからか、文章よりわかりにくいような気がした部分が気になったけど、こっちは0から映像で見られたのでよかったかも。

トァン、ミァハ、キアンという3人の女子たちがなかなか魅力的。(私の耳にはトワ、ミヤハ、キアと聞こえる)また、「虐殺器官」の殺人兵器について読んだ後なので、この作品でいう”自殺装置”の設定もすっと頭に入ってくる。少女たちが語る海外文学のうんちくも、小説と同様、イヤミに聞こえない。

ミァハの声が「綾波」っぽくて、この子もしかしたらアンドロイド、など思ってしまうけど、紛争地域生まれで苦労した女の子だった。

わかりやすくした分、もしかしたら深く入り込む要素が少なくなったかもしれない、なんとなくアッサリ終わっちゃった気もしたけど、これはこれで良しとします。

村瀬修功 監督「虐殺器官」2986本目

原作がとても面白かったのでアニメ化された作品も見てみました。

でも、印象違う‥‥。

「カフカの『ゴドーを待ちながら』が…」

「ゴドーはサミュエル・ベケットだよ」

「不条理な作品は全部カフカって言っとけばいいんだよ。突っ込まれるところを残しておくのが愛嬌ってもんだ」

(かなりいい加減な記憶のまま書いてみました)…が、たとえば、原作だと”鼻持ちならない”感じじゃなくて、好きなものについて自然に擁護してしまうように見えたんだけど、この作品では二枚目すぎる声どうしの会話なので、作ったように聞こえてしまう。

原作を読んだときは、映画化したらハリウッド大作みたいにスペクタクルでさぞかし面白いだろうって思ったけど、そういう感じは全然しない。原作もこのアニメも、最近の日本の少年少女が好みそうな「つめたさ」や「無関心」を秘めた作風で、共通してる部分はあるんだけど、原作の熱い部分がアニメからは伝わってこなかった。なかなかの名作なので、思い切ってハリウッドで莫大な制作費をかけて作ってほしい。

NetflixかAmazon、お金出してくれないかなぁ。。。

(それでも次の「ハーモニー」も見てみる)

ジャン・リュック・ゴダール監督「ワン・プラス・ワン」2985本目

ゴダールが撮ったストーンズのブライアン・ジョーンズの映画があるようなので、さっそく見てみる。

この間ザ・バンドのドキュメンタリーを見て、その元になったロビー・ロバートソンの自伝も読んだばかりで、その中にブライアン・ジョーンズとの出会いも出てきてたので、そんな時代を思い浮かべながら。

でもすぐにこの映画も、政治的メッセージ映画と化してしまって、どこを見たらいいかわからなくなってきます。困った人たちだ…(主観)

観念的って面白くないなぁ‥‥(これも主観) 

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