映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

斎藤寅次郎監督「東京キッド」109

1950年作品。

美空ひばりが13歳のときに出演して、タイトル曲を歌ったことで知られている映画です。
天才少女と騒がれた!って聞いてたので、どんなコマッシャクれて天才肌の子どもかと思って見たら、賢くて可愛げのある女の子って感じでした。歌もあじわい深くソウルフルだけど、おませ過ぎるとは感じませんでした。演技のほうで天才と騒がれてたわけじゃないので、映画には気楽に出られたのかも?

戦後の東京で、身寄りがいなくて、みんなにお荷物扱いされながらも、歌で人気者になっていく女の子を演じるのが、美空ひばり。本当の父親のところに戻されそうになって、見つからないために男の子の格好をしているのが可愛い。本当の父ってのがアメリカ(ハワイ?)に単身で渡って戦争で帰れなくなってたという設定なんだけど、これが花菱アチャコ藤山寛美ピエール瀧な感じの、人のいい大男っぽくてなんかいいです。

音楽を聴くと踊りだしてしまう同じアパートの住人にエノケンこと榎本健一。大変軽妙で芸達者です。「音楽を聴くと踊りだしてしまう」っていう説明だけで、ここまでちゃんとふくらませて笑わせてくれるって才能だよなぁ・・・。

堺正章の父親、堺駿二もコミカルな役で出ています。息子より小倉一郎に似てます。どんな映画に出たんだろ?と調べたら、とにかく何にでも出てたんですね。1950年代には年間20本も30本も出てます。テレビドラマを何本かかけもちしてるくらいのボリュームだったんじゃないかな?と思いますが、どれだけスピーディに映画を撮ってたかってこともわかりますね。

アメリカ旅行が当たるクジをもらって、夢の中でハワイに行く・・・という場面で、そのためにハワイロケを敢行しています。今みたいにホテルが建ってない広いワイキキビーチ。

映画のエンディングは、道の両側にまだ何もないところを、ひばりが父たちと楽しそうに歩いていくところ。明るい未来を感じさせる、いい終わり方でした。以上。