映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランソワ・トリュフォー監督「あこがれ・大人は判ってくれない」112

2本の作品が1枚のDVDに入ってるのを借りました。
「あこがれ」は短編で1958年公開、「大人は判ってくれない」は1959年公開。
なぜ借りたか思いだせないけど、感想です。

画面が美しくてなんとも引き付けられます。
「あこがれ」で少年たちが憧れるショートカットの若い女性の豊かな胸、ぎゅっと絞ったウエスト、ふわっと丸く広がるスカート。「大人は・・・」のぐれ始めた12歳の少年の暗いまなざし、大人びた歩き方、黒っぽいジャケット。まずなによりカッコいい映画です。

で、希望もなんもない、すべては希望のない結末に向かってゆっくりと進み続ける、という世界観。かといって、真っ暗ではないし、ゆがんでもない。リバー・フェニックスとか濱マイクみたいな、健康な不良の美しさです。(リバーは早世したしマイクは架空の人物だけど)「大人は」のラストシーンで、主人公の少年がこちらをまっすぐ見るまなざしから目が逸らせません。

情報ゼロのまっさらな状態で見たので、結末でびっくりでしたが、そういう驚きのある映画のほうがずっと身体に残ります。私はこれからずっと、黒いジャケットを着こんだ暗い目の少年を見るたびに、この映画を思い出すんだろうな。

え、原題は「400回の殴打」?・・・邦題のほうが100倍は良いです。

DVDはもう販売されてないようだけど、TSUTAYA DISCUSで借りられます。以上。