映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

橋口亮輔 監督「ぐるりのこと。」2609本目

橋口監督の作品なんだ。エイベックス前の浜崎あゆみが出てる「渚のシンドバット」もだし、「恋人たち」も大ヒットではないと思うけどキネマ旬報では高評価。そういう、イギリスの連続ドラマのように地味でよい映画を作り続けてる監督。

この映画は何年もずっと見よう見ようと思ってたけどやっと借りました。意外と昔の作品で、リリー・フランキーの役どころがまだ極悪じゃなくて中途半端なフリーターみたいな感じ。

この映画って、ホームドラマか何かわりと平和なものかと思って見始めるんだけど、木村多江演じる妻がだんだんちょっとずつ崩れてくるし、リリーフランキーが演じる法廷画家の夫がスケッチする法廷の人たちが尋常じゃなくて、これは笑う映画じゃなかったぞとわかってきます。 中絶って…やむにやまれずそういう形を選んでしまうことってあるんだろうけど、実際かなりの数が行われているんだろうけど、親たちの胸に大きな黒さを残してしまうのかもしれない、と思います。すごく難しい時間を生き延びて、光が差してきたのだったら、よかった…。

この夫婦の家族は絵にかいたような強欲で、小津安二郎の映画とかに出てたやつだ、という感じ。リアルタイムでそういう映画を見ていた世代なんだろうか、監督は?

結末までに至る部分が明るくて嬉しいけど、そうはいかないよな…というフィクション寒が終わった後でおそってきます。暗い世相と彼らを結び付けたのなら、今の世の中はその頃より良くなったって思ってるのかな?監督は‥。

ぐるりのこと。

ぐるりのこと。

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video