映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ダニー・ボイル監督「127時間」152本目

2010年作品。

Q: もし2020年オリンピックの開会式と閉会式の監督を選んでいいと言われたら、誰にする?
A:昨日の今日で井筒監督!・・・と思ったけど、それは大阪オリンピックですね。
東京っぽく日本らしい監督って誰だろう。園子温監督は好きだけどオリンピックはイヤだ。これ考えておくから、キネマ旬報で募集してくれないかな。

さて。ダニー・ボイル監督の作品は、トレインスポッティングにしてもザ・ビーチにしても、欧米人らしい冒険心(についていけなくて、「誰もいない砂漠の真ん中で知らない人に連れられて岩の裂け目から飛び降りる」場面とかで、ひどくびびってしまいます。

Blue-rayのおかげで、冒頭から映像も音楽もスタイリッシュで、広大な大地と渡りあってるオレ、みたいな麻薬のような自由さに陶酔していると(ただし前述のように内心はビクビク)、その慢心が文字通り落とし穴につながります。岩の裂け目から意図せず落ちてしまい、右手を岩にはさまれて身動きがとれません。

この状況、ふつうの日本映画だったらすぐに叫びだしたりパニックに陥ったりしそうだけど、彼はクールを保とうとします。お茶目さを失わないようにします。1人ぼっちなのに、カッコつけ?でもそれが多分、最後の瞬間がくるとしても、彼を救う。
・・・この映画が悲劇だったら多分ダニー・ボイルはオリンピックで登用されなかっただろう、とか思いながらも、「でもこの映画だけ特別かも」と不安になってしまう・・・。
引き込まれるジェームズ・フランコの鬼気迫る演技です。

ドキュメンタリーのようなこの映画の残念な点は、事実そのものの記録映画じゃないこと、という1点に尽きます。これほどの現実の前には、どんな演出も叶わない。

・・・ところで音楽がとても良いですね。懐かしい。Bill Withers 「Lovely Day」、「Ça plane pour moi」は両方とも1977年ですか。昔ラジオから流れてたなぁ、カッコいい。ついサウンドトラックをポチってしまいました。おっとこれってトレインスポッティングのときと同じ行動です・・・。以上。