映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「オール・アバウト・マイ・マザー」160

1999年、スペイン作品。

このタイトルを見て「イヴの総て」って映画を思い出したんだけど、冒頭すぐのところでまさにその白黒映画を主人公たちが家のテレビで見ている場面が出てきます。あれは、愛女優のところに野心をもった若い女優が近づいてきて、やがてのしあがっていくという映画。

この映画の中で、その後「欲望という名の電車」が繰り返し出てきます。こっち見てないんでちょっと損した感じ。。

・・・で、その2本のストーリーとパラレルに、この映画の中の時間が進んでいきます。とてもペースの速い映画で、むずかしいわけでも、複雑なわけでもないけど、なんていうんでしょう・・・重層的。なんとなく、南米の作家の小説のような、不思議な寓話的な豊かさがありますね。

大きな乳房をもった男、3人のエステバン、臓器移植コーディネイター、舞台女優、ソーシャルワーカー、突然の事故死、と“全部盛り”的。

最後のエンドロールが画面いっぱいに、巨大すぎるフォントでぐわぁっと広がって行くのも、あまり想像できなかったセンスで、面白いエキゾチックさです。「外国語映画賞」をあげたくなる気持ちもわかる、名作というか怪作です。映画を見過ぎた人に、むずがゆいような不思議な面白さを求めている人に、お勧めします。以上。