映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

チャールズ・チャップリン「モダン・タイムス」181本目

1936年作品。

第二次大戦前のアメリカ映画には、今のハリウッドの超娯楽大作的なイメージはなくて、実験的な作品が多いし、ヨーロッパ風味のものも多い、気がします。「間諜X-27」も出演しているのはドイツ人俳優が多いし。

無声映画(といっても音楽がついてるので音楽映画と呼びたい気もする)だと台詞がない分時間を凝縮できるのか、テンポが早くて80数分間でかなりの時間の流れを描けます。
チャップリンは監督、主演、脚本(?)だけでなく音楽もやってるんですね。コメディの舞台に立つ人たちは、なんでも自分でやってきたんだろうなぁ。

彼のボードビル・ショーの場面は最後の最後にやっと出てきます。身体のすみずみまでの動きが完成されていて、歌詞なんかデタラメでもおかしく、素晴らしいですね。

この映画は「機械文明に対する反骨」と言われてきた映画だと思いますが、チャップリンは工場だけでなく、デパートでも刑務所でもカフェでも、失敗して追いかけられてばかり。追いかけるほうも人間味あふれて愛きょうたっぷり。反抗したいのは「機械」だけでなく、貧しい少女が生活のためにパンを盗んだだけで捕まるような、人間味のない世の中になっていくこと、なのかもしれません。

自由で才能豊かでちょっとオッチョコチョイな二人が、都会を離れてどこかへ旅に出て、これから自由に暮らす・・・というラストには、じーんと来ました。以上です。