映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ブルース・ベレスフォード監督「ドライビング・MISS・デイジー」182本目

1989年作品。

これも名作と呼ばれている有名な作品だけど、初めて見ます。
どうしてこう映画を見てこなかったんだろうと思う一方で、こんなに毎日見ても見きれないほど名作があって嬉しい。

この映画は老婦人(ジェシカ・タンディ)とその運転手(モーガン・フリーマン)の話だということは知ってました。
誇り高い老婦人は、カタブツというわけではなくユーモアのセンスもあり、彼を黒人だということで差別したりもしません。運転手は誠実で温かい男。「若いころは貧乏で苦労したのよ、運転手を雇うなんてそんな金持ちっぽいことなんか絶対に嫌」・・・というカン所も、彼の能力や知識にだんだん頼るようになります。

そもそも運転手が必要になったのは、老婦人がギアを間違えて事故を起こしたから、というくらい彼女は高齢なのですが、運転手のほうもミルク工場を定年退職済の、高齢者にさしかかった年齢です。

会社を経営している老婦人の息子を演じているのはダン・エイクロイド。押し出しの強い合理主義者だけど、彼のキャラクター通りの朗らかでやさしい男。

アメリカにおけるユダヤ人とアフリカ系黒人の関係は、歴史の勉強をおろそかにしてきた私には正直よくわかりません。この映画は、雇い主と使用人という“身分違い”の人たちの間の友情を描いていて私の心にも響くんだけど、アメリカの歴史的感情を感覚的にわかる人が見ると、感動もひとしおなのかもしれません。いい映画でした。