1999年、およそ20年前の作品。
人情派というか叙情派というか、そんなデリケート表現にいつも心打たれるテレンス・マリックの作った戦争映画、とは。
若くて感受性の強い兵士の心の中の独白で、「男の全部は一人の人間でできていて、その中の一部が戦ったり死んだりする」というようなことを言う。これってすごい感覚だなぁ。ヨガとか瞑想とかで同じ部屋の人たちと繋がっていく感覚が、自分が死ぬかもしれないというときに連帯感のような形で感じられるなんて。ただ、その感覚は自己喪失でもあって、数万人いる兵士たちの中で、自分が死のうが、親友が死のうが、知らない人が死のうが、憎い上官が死のうが、そんなの誰でも同じだ・・・という意味でもある。そういう意識にならなければ戦線になど出られないのかもしれない。
無謀な攻撃を命じる指揮官に最後まで楯突く上官もいた。アメリカ軍にも無茶を言う人がいたんだ、そして部下を守ろうとする人もいたんだ。
「心の声」が流れる、その場で中心になる人物は、その時どきで変わるのだ。みんな宗教者みたいに達観している。テレンス・マリックって元々、コテコテの哲学者なんだってね。哲学のイメージよりは、宗教を感じさせるけど、既存のいかにもな宗教ではなくひとつの芯が通った価値観のようなもの。
だけどそれは特定の誰かを肯定したり否定するものじゃない。だからこの人の映画をみると、切なくて温かい気持ちになる。いろんなことをまだ疑ったことがなかった頃のことを思い出しかけてるような、ムズムズする感じ。
この人の映画を見ることそのものが、なんか精神科の治療みたいです。
- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
- 発売日: 1999/12/22
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