映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウェイン・ブレア監督「ソウルガールズ」2536本目

見終わってひとつうなずく。うん。これは、ゴスペルでキリスト教を広めるように、サファイアズの魅力でアボリジニの現代史を広める映画なんだな。

彼女たちの才能や魅力の輝きを、その後アメリカのショービジネスになんで持って、カーネギーホールに出なかったのか?その答えはちゃんと、キング牧師が暗殺された夜に黒人兵士がベトナムで言ってたじゃないですか。俺たちは誰のためにベトナムで人を殺してるんだろう?って。なんで彼女たちはアメリカ人を喜ばせるために、ダウンアンダーから来ましたアボリジニのシスターズです、ってアメリカで歌わなきゃならないの?って話だったんでしょうね。だって最後に写真だけ出てきた本物の彼女たちは、みんなびっくりするくらいアボリジニの地位向上に長年尽くしたんじゃないですか。メンバーのケイは「盗まれた世代」で、親と引き離されて暮らしてたという、彼女たち自身の時代の問題なんですよ。1967年にようやく市民権が認められ、彼らの聖地であるウルル(英語名エアーズ・ロック)の立ち入り禁止が実現したのはわずか2年前。アメリカで歌ってる場合じゃなかったんだと思います。

彼女たちのゴールはカーネギー・ホールじゃなかったんですよ。ケイがふるさとの町に帰ってきて、デイヴも家族になって、みんなで幸せに暮らしました、という素晴らしい、主張のある映画を見られて力強く思えました。

ソウルガールズ (字幕版)

ソウルガールズ (字幕版)

  • 発売日: 2014/07/02
  • メディア: Prime Video