映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャック・スマイト監督「エアポート’75」2441本目

昔テレビで見たかも。タイトルが昔っぽくて、かつ、飛行機も空港も大好きな私としては気になるテーマなので見てみました。

英語が始まったとたん(あ、吹き替えじゃないんだ)と思ってしまったくらい、テレビドラマっぽい始まり。この頃ほかにもたくさんあったけど、タイトルバックの文字のフォントが安っぽくて映画って感じがしない。ほぼテレビのミステリードラマシリーズです。(※嫌いじゃない)

作りはミステリー映画と同じで、”事件”が起こるまでは平和な状況下の登場人物の描写です。グロリア・スワンソンが実名の大女優役で出てたりするのも、テレビっぽいお楽しみだなぁ。このときもう70代のはずだけど(「サンセット大通り」の25年後!)、若くて美しい。エクソシスト1と2の間に撮影されたリンダ・ブレアはまだ少女。主役となる客室乗務員のカレン・ブラックと風貌が似てます。監督の好みかしら。(前田敦子にも似ている)

カレン乗務員は、しっかりしているけど緊急事態で激しく動揺して、彼女ひとりで着陸を成し遂げることは不可能。このシチュエーションは今なら宇宙船ですね。大型飛行機も大変な難易度だけど、飛行機はもはや、乗るのも、事故のニュースを見るのも(決して頻繁ではないにしろ)日常的なものになっていて、パニック映画の対象にはならないんだろう。改めて、場所が宇宙になっただけで基本的なところってなにも変わってないんだなーと、妙に乾いた気持ちで見てしまいます。

この映画が1974年ということは、私はまだ飛行機に乗ったことはありません。今やもう大変な飛行機好きの私ですが、大学受験で初めて乗ったときは航空中耳炎になったこともあって飛行機恐怖症になってしまい、しばらく乗れませんでした。今思うと、この頃の飛行機パニック映画のせいで飛行機が怖かったのかもな…。

誰もが自分も同じ仲間として共感できるところから、突然の事件、ドキドキハラハラ、もうダメ!からの帰還、というテレビ的にうまい作りで、楽しませてくれます。しかし、現実の事件をこの感覚で消費するのは、ほんとうに止めたほうがいいと思うな…。

ファッションや機内設備や航空機のコックピットは、ものっすごくレトロなものを期待した割には、基本的なところは意外とそう変わってないんだなと思いました。プロに事故があって素人だけでハンドリングとか、邪魔者が入るとか、人間もようも当たり前だけどシチュエーションが変わっても同じ。なんかこういう「昔流行った映画」って、そういう意味ですごく興味深く見られますよね。