映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジェームズ・マンゴールド 監督「フォードvsフェラーリ」2644本目

こういう映画ってフォード、フェラーリ各社はどのくらい協力とか黙認とかしてるんだろうなぁ。

(以下個人的な思い出)フォード車は一度アメリカに出張したときにレンタカーしたことがあった。コンパクトカーだけど2000年代なのにパワステもなくて窓もハンドルをぐるんぐるん回してやっと開くやつ。ものすごく重いハンドルに慣れたころに帰国して、羽のように軽いマーチのハンドルに戸惑ったっけ…。知り合いのフェラーリに一瞬だけ乗せてもらったこともあった。両側のドアが翼みたいにウィーンって上に向かって開いて、乗り込んだ姿勢は「仰向け」ってくらいの傾きで、動き出すと工場みたいな重い音がしたっけ…あっ映画とは関係ないですね。

この映画って、最近これほど味方と敵がわかりやすい映画ってあんまりないですよね。その一方で、今そこで何が起こってるかは私にはわかりにくかった。クルマ、一時期好きなこともあったのに手も足も出ません。ブレーキ部品の交換のからくりとか、いろいろググってやっと理解できました。

もう一つやっと理解できたことは、フォードが一時期スポーツカーを作っていて若者の憧れだった時代があったことだな。私が知ってるフォードは流れ作業で自動車を世界中に普及させて、その後時流に乗り切れず苦戦してるってことだけで、1970年代にイギリスのロックバンド(T.Rexですが)が「ムスタング・フォード」っていう歌を歌ってたことが理解できてませんでした。その頃はイケてるクルマ会社だったんだな…。

そんなフォードがなぜ今この映画を?宣伝というより回顧か?というよりむしろ、アメリカ人がクルマの誇りを回顧したい映画なのかな。友情物語を強調すると経営陣との対立が単純な勧善懲悪にならざるを得ない。これって登場人物ぜんぶ実名でマツダのロータリーエンジン開発の映画を作るようなものだもんな…。アメリカはこういうとき日本より若干、懐が深い。

反骨精神あふれる実力派ヒーロー、男の子なら誰でも憧れるケン・マイルズを演じたクリスチャン・ベールは、今回は「標準体型より細い」くらいの体型だけど、喋り方が不自然になってしまったのが気になる。役作りのために歯並びを変えたことがあったらしいし、役のためにあまり極端に肉体をいじめるのも心配です。彼の強気だけどどこかはかなげな細さが、結末の切なさをさらに強調しているのは確かですが。

カーレースやカーチェイス、格闘技や戦闘って、苦手なんですよね…いい映画からでそういう場面を見逃すと、映画としての楽しみや完成度が損なわれるので、一生懸命見るけど、激しい場面ってエネルギーを奪われるようで。やっぱり一番好きなのは人間ドラマ系なのかな。。。

フォードvsフェラーリ (字幕版)

フォードvsフェラーリ (字幕版)

  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: Prime Video