映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ニール・ジョーダン「クライング・ゲーム」2752本目

(ネタバレあり)

不思議な映画だったなぁ。

IRAのテロリストたちが闘争活動をしている中で、拉致した男を死なせてしまい、その恋人と恋に落ちてしまう…という大筋はあるんだけど。

第一、彼らが拉致する英国軍兵が黒人のジョディ(フォレスト・ウィテカー)なんだ。冒頭の場面がコニー・アイランドに見えて(行ったこともないのに)、アメリカ映画だと思ってたのに、ちょこちょこと不思議な設定がある。で、拉致された兵士がいい奴でテロリストのファーガス(スティーブン・レイ)と友情が生まれてしまう。

結局命を落としたジョディの最後の言葉を受けて、彼の恋人に会いに行くファーガス。その恋人というのが、エキゾチックでやたらセクシーな美容師「デイル」。彼女のキャラクターがとてもユニークで、画面に目が釘付けになってしまいます。話す声は男みたいなんだけど、キュートでミステリアスで。ファーガスはすっかり彼女に夢中になってしまいますが、彼女が実は男性だということがわかって、ベッドでなんと吐き気を催してしまいます。…デイルを演じたジェイ・デイヴィッドソンはその後いくつか映画に出ただけで引退し、今は男装に戻ってパリでスタイリストをやっているらしい。思春期にさしかかったばかりの少女みたいなあやうい魅力は、その時期だけのものだったのかもしれません。

他にも、冷酷なテロリスト「ジュード」は「パルプ・フィクション」のユマ・サーマンの原型だよね?…など、本来のストーリーと関係ないところに、なんかすごく光るところがあったり、そもそものストーリーに普通ないような不思議なツイスト(恋人が男とか、最後の殺人の経緯やエンディングとか)があったりする、変わった映画です。妙な魅力があるんだけど、こういう映画って期待しても作れないし見つけられないだろうなと思います。