映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ケー・エス・ラヴィクマール 監督「ムトゥ 踊るマハラジャ」2795本目

この映画たしかに見た記憶があるのに、感想書いてません。いつどうやって見たんだろう?TSUTAYAのレンタル履歴にもない…。まさか劇場に行ったのかな。これがおそらく初めて見たインド映画だと思うので、いきなり166分に劇場で挑戦するほど私に勇気があったとも思えないけど。

今見ると、めちゃくちゃ古臭いですね。最近はCG使い過ぎでうるさい映画が多いけど、タイトルのテロップも昭和のNHK番組みたいなイケてなさ。「大地のうた」とかの大昔のインド映画と最近の映画のあいだ、過渡期の作品という感じまでしてきます。これを2021年のお正月にNHKが放映する理由がわかりませんが、Amazonでも会員無料配信してるんですね。減価償却しきっていろんなスクリーンに放出されたってことかなー

ミーナさんの強烈な可愛さ、おなかのぷっくりした感じ…この映画を見たとき、インドではヒロインは美女だけどヒーローはかっこよくなくてもいいんだと思ったことを思い出します。荒唐無稽でうるさくて、長くてしつこいかもしれないけど、これは私が初めて見たインド映画で、その後自分で旅行したインドはだいたいこの映画のまんまだったなぁ、という、私にとってはけっこう大事な作品です。

「だますより、だまされるほうが罪深い」と賢者(となる前のムトゥの父)が言いますが、それもまた真だなぁ。誰もだまされなければ、騙して悪人となる人もいない。この賢者ってブッダみたいですね。ムトゥを演じた国民的スター、ラジニカーントもまたヒンズー教徒だそうですが、宗教が分かれていく前のヴェーダの時代のインド哲学なのかなー。

インド映画ってきれいに勧善懲悪で、見たあとスッキリするのが多いですよね。この泥臭さ、こどもにも初めて映画を見た人にも納得できる道徳観。いやーいいものを再び見せてもらいました!