苦手かも、と思ってるのに気づいたらまた借りてた。この人の映画は全部、中心になる人の顔色が白い。死人と生きてる人を描き分けようとしたと思ったこともあったけど、いつもそうなんだな。
短いコントみたいな場面がどんどん変わっていき、前の場面と関連があったりなかったり。ときどき「くすっ」と笑うこともある。これって…もしかしてEテレの「2355」(早起きの人が見る「0655」ではなく)とか「びじゅチューン」とかが好きなちょっと辺境的な人(失礼、ほめてます)が好む映画なのかな。最初から最後まで全部ギャグだと思って見ればいいのか。しかも、M-1を見るように面白さを評価するんじゃなく、なんとなくこの世界が好きかどうかだけでぼーっと見てればいいのか。
ロック少女がギタリスト(ほんとにギター上手い)と結婚した夢を見たと話す場面。まだウェディングドレスを着ている彼女、彼は部屋でギターを弾いている。その部屋の窓の外が動いている。走っている。これは電車の中か?それにしては天井が高い。…やがて駅に着くとプラットホームに入りきれないほどの人たちが二人の結婚を祝っている。…この映像を作るために、監督はたぶんとんでもないお金をかけたんだろうな。本当に部屋の形をした列車を走らせたかもしれない。
ふむ。なんとなくこの映像が見られたのは良かった。あと、お金かかってない感じのバーで店員がガラガラとベルを鳴らしてラストオーダーを知らせる場面。あんな寂しいバーに一人で飲みに行く人がいるなんて信じられない寂しさだけど、なんか頭に残る。
不思議な北欧の画家の絵を見に行ったみたいな気持ちになればいいのかな、ロイ・アンダーソン監督。 とうとつな「電気椅子」や戦闘機の群れ(これも本当に飛ばしたんだろうな、きっと)といった外部からの脅威のトラウマが強くあって、ふつーの映画が作れない人、みたいな感じ。幸せな場面は夢で、苛酷な場面は現実として語られる。慰めはバーが閉まっても「明日またおいで」だけか。
好きも嫌いもわかりきれないから、また見てしまいそうだな、この人の作品。