宮崎あおいが出てる、悲惨な内容の映画…と思ってちょっと敬遠したまま今まできてしまったけど、いろんな映画をその後たくさん見てきたから、もう耐性が付いたかなと思って、見てみることにしました。
阪本順治監督だから、露悪的じゃなくて怖くはなかった。
子どもの臓器移植のための募金って、何かいやな予感がしてあまり寄付する気になれませんでした。たとえ事故や病気で亡くなっていたとしても、外国の子どもの臓器は、その国で移植を待ってる子に使ってもらうのがまず第一のはずだから。為替のバランスによる国単位の貧富の差は残酷で、お金に目がくらんだ人がそういう罠を張る。罠に落ちる。自分の子どもだけが助かればいいというのも、自分の秘密の欲望をこっそり満足させようというのも、愛じゃなくて欲だ。
で、この状況をSFにしたのが「わたしを離さないで」だ。アジアのこの状況をみて、これが合法化された状況がありうるのか、あり得た場合その子どもたちはどういう風に生きて何を感じるか、という想像をめぐらしてできたフィクションだと思う。
映画に戻ると、宮崎あおいがナイーブなボランティアを演じるのはぴったりだけど、江口洋介は意外性を見せてくれた。「ひとつ屋根の下」だもんね。だけど、人間であるかぎり、禁じられた欲望を持つ可能性は誰にでもある。そうなった場合の葛藤はただごとじゃないだろう…。
どんな人の心の中にも悪魔がいる。それを上から押さえつけるだけじゃなくて、どう折り合いをつけて飼いならしていくかを、みんなもっと学ばないといけないのかもしれない。