吉田羊はいい。村上春樹の主人公は、目立たない人じゃなくてぱっと見はなやかで美しい人たちが似合うんだな。かっこいい人生を送っている人。でも心の中の暗闇は深い。村上作品は最初から今まで全部、大事な人を突然失った真っ暗闇を埋められず、あの世とこの世の間みたいなグレーの空間に漂い続けてる人が主人公なのだ、とやっと気づく。他の登場人物は、大事な人(純粋すぎて闇にとらわれてしまった)の喪失に関係がありそうな、屈託がなくお金と権威を持つ男。暗闇に光を注ぐ女性。
この作品では闇に持っていかれたのは息子で、システムとか豊かさの側の悪の人間は出てこないように見える。でもやっぱり喪失の物語だった。
ノルウェイの森からずっと村上作品を好きじゃないのに読み続けてる自分もまた、グレーの空間に捕らわれたままなんだろうか。まあまあ頑張れてる、明るくやれてる、と普段は思ってるけど本当はどうなんだろう。
村上作品は怖いのだ。読んでるうちにそういう世界にずるずる引きずり込まれてしまう。映画もこうやって続けて見てると、はまりこんでしまって、戻ってこられなくなっちゃうのかな…。
でも続けて見てみます。どこにでも連れてってくれ。