映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

市川準監督「トニー滝谷」3165本目

続けて見ると、見えてくるものがあるなぁ。

この作品では西島秀俊がナレーションをやっている。主役のトニー滝谷はイッセー緒方、美しく壊れた妻を宮沢りえ。彼女は「ドライブ・マイ・カー」のセックス中毒(のような感じ)のかわりに洋服を狂ったように買いまくっている。生前ほかにも男がいたらしい気配も「ドライブ・マイ・カー」と同じだ。いやになるくらい、村上春樹は同じことを何十年にもわたって書き続けている。

続けて見ると重畳的に、重なってくる、畳みかけてくる。重い。

この作品は76分しかなくて、監督が徹底して「余分なものを足さない」演出をするとこうなる、というお手本なのかも。でも、足そうが足すまいが、まとめて見ればその辺は薄まるのだ。

村上春樹の持つ底なしで永遠の闇に引き込まれそうになってる。しばらく海の底を漂ってから、浮上するのを待つしかないか…。

トニー滝谷

トニー滝谷

  • イッセー尾形
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