映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アニエス・ヴァルダ監督「5時から7時までのクレオ」3274本目

ヌーヴェルバーグというと、なんだか小難しい最先端を気取った何かを見せられたらどうしようと思ってしまうけど、リアルな若い女性の夢や不安を率直に描いた好感触の作品でした。

冒頭、タロットカードだけはカラーで、それ以外は白黒。検査結果を恐れて、頼みの綱のタロットカード以外はすべて灰色に見える彼女の心象風景。一番かわいいドレスを着てカフェでコーヒーを飲んだり、素敵な帽子を買いに行ったり。若い女子の感覚が自然に出ていて、やっぱりこういう作品は女性監督にしか撮れないなぁと思う。

クレオを演じてるコリンヌ・マルシャン、可愛いですね。同性からも親しみを持たれそうなベビーフェイス。そして彼女は人気歌手で、お付きの人や取り巻きに囲まれた、誰もが憧れるような境遇にあることがわかってきます。だけど死んでしまったらみんなおしまい。いつか死ぬ、という恐れは老若男女、美醜や豊かさや賢さを問わず誰もが持つもの。

最後にクレオはチャーミングな軍人さんと、いつか来るその日を見据えながら、今までよりも希望に満ちた時間を過ごすのかな。そういうのを幸せっていうんじゃない?という実感にたどりつけたようでした。見終わってみて、意外なほど満足感のある作品でした。もっと早く見ればよかった。

5時から7時までのクレオ (字幕版)