映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウディ・アレン監督「インテリア」3568本目

U-NEXTの紹介ページに、ウディ・アレンがイングマール・ベルイマン監督にオマージュを捧げた作品って書いてあったけど本当?

そう言われてみれば、そんな気がしないこともない。出演者がリヴ・ウルマンじゃなくてダイアン・キートンというだけのことか?でも私が思い出したのは、極端に強い母の出てくるペドロ・アルモドバルやグザヴィエ・ドランの映画とか、アガサ・クリスティが変名で書いた非ミステリー小説とか。

クリスティの「春にして君を離れ」という小説では、仕切りたがりの、自分は尊敬される家長だと思っている母親が、ある日昔の記憶をたどるうちに自分が間違っていたと気づいていく。これ読んでてすごく怖いんですよ。でもこの映画では、家長のような母親は、最後まで自分で認知を深めることはありません。ちょっと極端ですよね。女性なら誰でも、突然絶望する前に自己憐憫とか他人への押し付けとかの段階がある気がする。

ウディ・アレン作品には必ず監督自身が出ていると思うんだけど、この作品では母親と父親のどちらだろう。長年抑圧されてやっと自由を得た父親のつもりで作ったのかな。でも監督っていうのは何でも自分の思うように完璧を求める、この母親のような仕事だ。最近の作品みたいに、極端な性格の人物たちの可笑しさを描き始めていない分、シリアスだけど青臭い感じもするのでした。

インテリア

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  • クリスティン・グリフィス
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