映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

想田和弘監督「精神0」3594本目

「精神」は2008年。この作品の12年前です。この作品のなかでフラッシュバックみたいに白黒映像ではさみこまれる、当時?の医師とその妻の様子が、今よりだいぶ若い。今が後期高齢者で、当時はまだ中年という印象です。

「精神」では、ひたすら患者のほうに見入ってしまったけど、こちらでは、患者もたくさん登場する一方で、医師とその妻の家庭にカメラが入っていきます。当たり前だけど、これほど献身的な医師は家庭にいつかなかったことが容易に想像できます。容易に。

本物の生々しい現実の前には、映画愛好家の分析癖なんて何の役にも立ちません。みんな、苦しくて、一生懸命で、傷ついたけど、できる限り人に優しかった。みんな誰かを信じて大切にしてきた。。。と思うだけで、人間ってけっこう偉大だな、と思えてきます。

患者たちの実態を世間に知らしめた前作でその目的は達成できていて、この作品はその続編というより、医師の側の決着をつけるというか、最後を引き取るために必要なピースだったのかな、という気がします。見て良かった。