映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

三上智恵監督「沖縄スパイ戦史」3634本目

せっかくGWに沖縄で羽根を伸ばそうというときに、ついこういう作品を選んでしまう。やんばるの森で2泊する前の夜に、那覇で街歩きしたあと、ホテルの無料VODで見ました。本土のVODでこの作品を見かけたことはありません。今は世界遺産になった森を舞台に行われたかつての戦争。

しばらく感想を書くエネルギーが出なかったくらい辛い、小さいかわいい男の子のむくろたち。痛くて哀しくて切なくて。

思うのは、彼らに戦禍をもたらした軍部ってこの時点に至る前からすでに「カルト」だということ。なんの大義名分があろうと、捧げるのが彼ら本人であろうと他の民衆であろうと、死をもって何かを達成しようという考えが起こった時点で自分たちを疑ってほしい。

敵と味方という二項対立は、極悪人が自分以外の人たちを争わせて自分をその上に置くための戦略だということを、だまされやすい日本人のわたしたちも、みんな気づかないといけないと思う。カルトは悪い、だまされるやつも悪い。でも、カルトを始めた者はもっと悪い。私たちは、強い立場で間違ったことを言う人たちにちゃんと反論できないといけないのです。

こういう映画を見てショックを受けたら、ばくぜんと彼らを傷つけた誰かを憎むだけじゃなくて、誰が何をしたからこんなことが起こったのかを追求する気持ちを持ち続けなきゃ、と思います。

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