映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

タカハタ秀太 監督「鳩の撃退法」3647本目

公開すぐに劇場で見たけど、今度は家でVODで見ました。

佐藤正午は、今いちばん本当に面白い小説を書く作家だと思ってる(40年くらい前から)。日常から逸脱に逸脱を重ねて、どこまでも途方もなく遠くまで行ってしまうプロットを、推敲に推敲を重ねて仕上げていく。これは小説をどうやったら面白い映画にできるか?という挑戦だったんだと思う。プロットがややこしすぎるのと、なるべく何も落とさずに全部入れ込もうとしたことで、初見で把握しにくい映画になってるのかもしれないなぁ。(なるべく結末をやさしくしようとしたことも、それにプラスしてる)

2回目の感想も、原作に思い入れのある人たちがリスペクトたっぷりに、かつ、エンタメを志向して作った作品だと感じたけど、やっぱりわかりにくいかな。むずかしいかな。1本の映画に込められる複雑さって、誰が見るにしても限度があるんだろうな。

最後にやっとタイトルが出て、小説のページの上にエンドロールと井上陽水の「氷の世界」「爆ぜる心臓」が流れるのもスリリングでいい。

役者さんはとにかく風間俊介がいいし、ぬまもと君もいいし佐津川愛美もいいけど、ビジュアル作品に仕上げるためには藤原竜也も必要。評価が低くて残なんだけど、あきらめずに今執筆中の「冬に子供が生まれる」とかも映像化してくれないかな~。

今のところ、佐藤正午原作の映像化作品で最高なのはNHKでドラマ化した「身の上話」かなー。

鳩の撃退法

鳩の撃退法

  • 藤原竜也
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