映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ステファン・ノヴィツキ監督「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン」3677本目

見損ねてた作品がU-NEXTに戻ってきたので、さっそく見てみます。

私はブラックミュージックに詳しいほうじゃないけど、若い頃の音楽好き仲間はアメリカのルーツミュージック好きが多くて、アレサは彼らの女神でした。

若くてパワフルな歌声が、まっすぐ心の真ん中に届いてくる。こんなに素晴らしい音楽を作る人たちが、自分たちと同じ神様をこんなに愛してるのに、彼らにキリスト教を教えた白人の人たちは何を理由に彼らを差別しようなんて思うんだろう。むしろ憧れて当然なのに?

これはつまり、差別する人たちの信仰心は本当は強くなくて、宗教は自分たちだけを守ってくれて、非差別人種の人たちを扱いやすくするためだけの便宜だと言ってるようなものじゃないのか?私はクリスチャンじゃないので、ここまで熱狂的な信仰にはまったくピンとこないけど、自分が同じ宗教だったら、彼らのことをないがしろにはできないと思うけどなぁ。

この芝居っけたっぷりの牧師のパフォーマンスを見ていると、ジェームズ・ブラウンが舞台から下がるときの小芝居と同じ類いだなと思う。こういうベタなのを好む人たちなんだな。この作品は多分、映画としての構成とかがない裸の演奏や歌のすばらしさをかいま見させてもらうための記録で、私たちはお邪魔してるだけの異教徒なのだ。彼らは信仰のためにそこで演奏し歌っているのであって、録画を見る50年後の私たちがどう感じようが関係ない。評価するなんておこがましい。

最も音量が大きい部分や音程が高い部分が冴えわたるシンガーはたくさんいるけど、アレサの声は一番弱い部分もぐっとくるんだな。隙がない。それと、この高揚する群衆のエネルギー。出しても出してもあとから湧いてくるエネルギー。

こういう貴重な音源と映像は、どんどん見せてほしいです。音楽を愛する人や音楽をやっている人がみんな見るといいなぁ。