映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

青柳拓監督「東京自転車節」3708本目

この映画ずっとずっと気になっていたんだけど、コロナ禍の直前に仕事を辞めて、収入が不安定な頃だったのと、映画館はわりと苦手(閉所恐怖症かな)で、今頃やっと見ました。遅くなってごめんね。(と、映画に)

普通の男の子が大人になっていく映画。と、まず思いました。コロナ禍は本当にキツかったね。奨学金ローンもあまりに取り立てがキツイ。先が見えない。でも泣いてるだけでは子どもと同じ。毎日がんばって、少しずつ強くなっていくのだ。流れを変えられるのは勉強と仕事だけだ、私の今までの努力や絶望も、彼の苦行も、きっとすごく厚い上着みたいに私たちを富ませてくれてるはず。2021年からもう2年たっていて、20代の若者は見違えるほど成長しただろうな。

UBER EATSやAmazon、サバイバル・ジョブとしてやる人も多いけど、みんな体力的に辛そうだ。30年前なら、こういうきつい仕事をしばらくやれば、海外旅行に行けるとか、ギターが買えるとか、夢をかなえるためにやってる人も多かったけど、今はそういう仕事の相対的な賃金が下がってる。仕事を辞めるまで、こういう実態ってリアルには見えてなかった。この映画は、一つの仕事っていうより、一人の男性が配達をする中でどう生きていたか、というきわめてリアルなドキュメンタリーとして、新しいし面白かった。いろんな仕事をしてる人がみんなGoProつけて撮影してくれたら面白いだろうな・・・。