映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「欲望の法則」3709本目

Amazonプライムは配信終了、バカ高い中古のDVDしか見当たらないので、思い切ってUK版DVDをお取り寄せ。18日かかったけど1700円で買えたし、UKのリージョンは日本と同じだ!とDVDデッキにかけてみたら。。。PALだった。(日本のDVDフォーマットはNTSC)こんなときのためのポータブルDVDプレイヤー。なんでもかかるこの機械ならちゃんと見られるのでした。(画質も英語字幕も見づらいけど)

カルメン・マウラが、性転換手術をしたもと男性で、男の子だった頃の自分を棄てた牧師に会いに行く、という、よく読まないとわからない複雑なシチュエーションが、すこし新鮮です。アルモドバル監督の映画ではよく、中心的な人物が女性であることがずっと気になってたのですが、彼女たちは「自分のなりえた姿」として監督の化体した姿なのかもしれません。

彼女が育てている女の子の親はTokyoに行ったきりだし、パーティでカルメンとその女の子はチョンマゲをつけている。(ローストチキンの持ち手みたいなの)

この作品も、主役が映画監督。劇中、自分のボーイフレンドに、企画中の新作の話をするんだけど、これが「Human Voiceっていうんだ、でも女性の一人語りだから君を出すのは無理」って言っててびっくり。去年ティルダ・スウィントンで映画化したやつじゃないですか。35年も温め続けてたんですね、この企画。部屋を破壊するカルメン・マウラ。。。

元彼がスーツケースを取りに来るのを待ち続けるのって、「神経衰弱ぎりぎりの女たち」とも共通してる。映画監督と本命の男、出会ったばかりの別の男・・・。

そして、動転したまま運転して木に激突。亡くなったのは彼ではなくて若い恋人。これは「抱擁のかけら」だ。記憶を失って入院している男は「私が生きる肌」か。”息子”時代のカルメン・マウラは父とできてて、モロッコで二人で暮らすことにしたので父は母離婚・・・これは「ボルベール」に近い。

最後の場面、たくさんの飾りのついたマリア様の祭壇の前の男二人。これは初めて見た。とても美しいけど、はかない。そんな「狂気の愛」の物語。

ほんと面白い、彼の映画ってずっとつながってるひとつのモチーフなんだな。この作品って、このあとで監督が作りたい作品のかけらがたくさん散らばってて、ファンとしてはすごく興味深い作品なのでした。

(合鍵屋の店員として監督が出演してた)

欲望の法則(字幕版)

欲望の法則(字幕版)

  • エウセビオ・ポンセラ
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