映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

松山博昭 監督「ミステリと言う勿れ」3739本目

テレビ版を見てました。いろいろムリムリな設定やトリックばっかりなんだけど、私は「土曜ワイド劇場」を見て育った女。テレビのサスペンスドラマの空気感が好きなんですよね。今いちばん勢いのある素敵な役者さんたちが勢ぞろいしているという魅力もあります。

映画版はテレビより面白かったですよ。ととのう君のコメントがなかなか的を射ていて、いいキャラクターなんですよね。その菅田将暉以外にも町田啓太や松下恍平(一瞬だけ永山瑛人も)もいつも素敵です。原菜乃華 は喋り方が初々しいので、いい具合に幼さが感じられました。脇を固める大人たち、滝藤賢一、鈴木保奈美、松坂慶子、尾上松也、柴咲コウ、角野卓三、でんでん。。。 貫禄でお芝居に厚みをもたらします。こういうビッグネームが出ると良いのは、「誰が犯人でもありうる」と思いながら見られること。松坂慶子がこんな出番の少ない役ってことはないだろう!とか。(日本の映画はどうしてもビッグネーム頼みだから、という背景もある)

ご先祖様の狼藉を子孫はどう受け止めるか、というのは意外と重い問題です。遺伝的な性質は変わらなくても、それがどう表出するかはほぼ環境で変えられると思う。刑法的には先祖の罪を子孫が償うことはないけど、民法的には相続放棄しなければ債務として相続される。戦争に行ったおじいちゃんが敵地で亡くなるのはとてつもない悲劇だけど、心の負担や重苦しい罪の意識をたくさん持って帰ってくるのも大きな悲劇だ。だから戦争はしないのが一番、だけど、犯罪者だって犯罪をしようと思って生まれてくるわけじゃない。やってしまった後をどうするか、という問題をこじらせると、この映画のようなこともありえなくはない・・・かもしれません。

(このくらいならネタバレじゃないですよね?)