今回のNGワード:「体当たりの演技」
軽く見られる作品はないかな、と思って借りてみました。1992年、今から20年も前の作品だけど、この監督の作品の中では新しいほうです。
永井荷風が自分の小説の主人公となって、小説世界の中の遊郭を回ります。自分の娘ほどの遊女のところに通ってはそれを小説に書く、という毎日。コレクターのように女性たちのことを書き残す。ときに執心して追いかける。
男性は、自分の性の衰えを生命力の衰えと感じて胸を痛めるものなんでしょうか?
この映画には私にはストレートに訴えてくるところがなくて、何を伝えたかったんだろうと考えています。この映画をキューブリックのアイズ・ワイド・シャットと比べるのは単純すぎるのかな。
村田喜代子の小説の中には、女性が「白いスカートを気兼ねなく着られるようになってから、楽に生きられるようになった」というようなことが書いてあったりして、女性にとっては性から解放されることが心の平和につながる部分もあります。男性は逆なのかな。一概に言えるものではないだろうけど。
さて、出演者ですが、津川雅彦はぴったりだけど「いかにも」です。実際の永井荷風の風貌はむしろ”お兄ちゃん”(わたしの好きなSparksのロン・メイル)によく似ていて、もーちょっと線の細い人が演じたらどんな感じだったかなーと思います。(新藤兼人作品的には、宇野重吉とか…あ、もうこのとき亡くなってますね、すみません)
で、荷風が晩年通い詰めた遊女「お雪」を演じた墨田ユキがとても良いです。美しい体をほめるサイトはほかにたくさんあるのでいいとして、自然で明るい演技で、けなげさを感じさせます。
では、今日はこのへんで。