映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

新藤兼人監督「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」20

1923年から晩年の1956年まで、90本を超える映画を監督し続けた日本の巨匠 溝口健二の生涯を、新藤兼人本人による多数のインタビュー映像でまとめたドキュメンタリー映画。1975年公開。

ところで映画監督は「ジャーナリスト」なんでしょうか?(そもそもジャーナリストって何だろう?→参考・Wikipedia
テレビの世界の人は、たとえ今は語学番組を作っていても、自分がジャーナリストだという意識を持っている人が多いように思います。それに比べて映画監督というのはもっと芸術家意識の強いものかと思っていましたが、この映画での新藤監督はジャーナリストです。事実を追いかけて追い詰めて突き詰める。取材対象が顔を赤らめても口ごもっても、攻め続ける。だいいち、昔ながらの日本映画の監督がずっと画面に映ったままなのも変なんだけど、見せているのが背中だけというのも尋常でない景色です。まるでマイケル・ムーアだけど、新藤監督の方が先だ!

ひとりの監督というより、私としては活動写真〜映画への歴史として見る感じでした。
もっというと、「近代日本文化史」という感じでもあります。明治〜大正〜昭和の戦前あたりまでの歴史を肌で理解したい人は、溝口健二の映画を見ると良さそうです。そういう企画上映をやってる映画館があったりするのかな〜。

川口松太郎溝口健二について言う「ヨーロッパに影響されていない、日本的な演出」とか「こういう演出をする人はもう出ないだろう」といったことばが面白いなぁと感じます。奇しくも、日本のアニメが今アメリカやヨーロッパのアニメマニアから言われていることと同じだからです。特に意識しなくても出ちゃう自分らしさってのが、たとえば小さい頃の祭囃子や民謡やおじいちゃんの語り口で培われた間の取り方だったりするのかもしれません。

私たぶん溝口監督の作品ひとつも見たことないので、とりあえず「雨月物語」見なきゃと思います。予約、予約…と。以上。