映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

黒澤明監督「赤ひげ」76

1965年作品。

黒澤作品って、こういうホームドラマ的なもののほうが好きかも・・。
三船敏郎がすでに初老の感じで貫録がありますが、当時まだ45歳かぁ!!

185分の長尺の映画ですが、オムニバス形式(昔の映画に意外とよくある)で、三船敏郎演じる「赤ひげ」と加山雄三演じる新任の若い医者を中心に、さまざまな患者が入れ換わり立ち替わり登場して、暗く貧しい下町の暮らしにぽっと明りを灯すような療養所を描いた作品です。

ところどころ音楽だけになるところがあるんだけど、これってフィルムが残ってなかったりするんでしょうか??

キャスティングはほかに・・・
野村昭子、最高。まったく今と同じ姿かたちと役柄で出ています。
内藤洋子かわいい!いまでいう多部未華子のようなポジションですかね。
加山雄三はまっすぐで初々しい「若大将」のままで、その点ではこの映画のタイトルは「診療所の若大将」でもよかったくらいです。

無料の治療時間を設けているこの療養所の患者の多くは、非常に貧しい人たちで、老人や子どもも多い。貧しいから病気になる、貧しいから盗みをする、借金があるから好きな人と一緒になれない。つい涙ぐんでしまう場面がたくさんあります。生活が豊かになればみんな幸せになれる…というわけでもないのは、人の心は足ることを知らないからでしょうか。
(私こんなことばっかり書いてますね。偉そうなので自粛します)

赤ひげ先生が、お金持ちからは診療費をちょろまかしたり、やくざを殴って骨をばきばき折ったりするのが印象的です。(その後「医者がこういうことをやってはいかん。」とか言いながら治療する、という)暴力や犯罪へのシンパシーっていうのは、実際にやるかどうかと別の次元で、見てる人の中にもあるのかもしれません…。ここまでおおっぴらにやられるとどこか爽快です。

というわけでよい感じでした。以上。