映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

庵野秀明監督「式日」168本目

2000年作品。

岩井俊二が俳優として出てるというのに興味をもって借りてみました。
普通は、エヴァンゲリオン庵野秀明が実写映画を撮ったというので借りるんだと思う。
エヴァTVシリーズは一通り見ましたよ。で、思うに、この監督は、というかこの世代のこのかたまりの人々は、少女っていうものの痛々しさ、新しさ、をうつくしく思い、それを際立たせるためにさらに追い込んでうつくしい狂乱や苦悶の表情を見ることを好む。そうやって徹底的に彼女を愛する。・・・という気がします。

女性側からそういうものの美しさを描くとヴァージンスーサイズになる気がする。女性的な視点から見ると。一方この映画は、なんか男性的なんだ。ひとことで言うと、イカれた彼女をイカれたまま全人格的に包みこんであげる、という感じ。

岩井俊二はやさしくてきれいで、落ち着かせる声をしてます。演技はむむむ、って感じだけど。なんか母親のような風貌ですよね?ダンテ・ガブリエル・ロゼッティの描く女性のような。

中心となる藤谷文子は「不思議ちゃん」なんだけど、イタイ感じではありません。不思議につきつめた映画美術の世界が、美しいし不思議。ただしこの子の心の中というよりは、庵野監督が見たい情景なんじゃないかな?

映画としてのオチも着いてて、大竹しのぶがちゃんとまとめてくれてます。彼女のすごいところは、素人のような人たちと演じても浮かないところです。相手を選ばない。

主役の二人の演技をじっと見たり、ドラマとしてストーリーを追おうとすると、だめな作品に見えてしまうかもしれない。かといって、映画美術のひとつの極を目指そうとしてると思うので、これをアニメでやっては仕方がない。小さい島の不思議な美術館に来た、というつもりで見ると楽しめるんじゃないかな。

とても実験的な、面白い試みでした。以上。