映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

園子温監督「夢の中へ」281本目

2005年作品。

それほど売れてない劇団っていう、どっか寂しい切ない場所にいる、優しいけどちょっとゆるい男たち女たちが、誰が性病を移しただの何だの言いながら、くっついたり離れたりしてる。

TVに出始めた俳優「鈴木ムツゴロウ」が酔っぱらって帰ってきた。ずーっと同棲してる元女優と大ゲンカするけど、怒りまくってるときもどっか抜けてて可愛い奴です。こいつがうたた寝していろんな変な夢をみます。夢の中で夢をみるようになって、だんだん混乱がはじまります。

日本中の携帯電話をオフにするために命がけの計画を仲間たちと立てている・・・って場面も出てくるけど、この人たち何なんだろう。同じ作業服を着ているその場所は、いったいどこなんでしょう。
で「スナック俺」ってなんだよ!・・・等々

重層的に場面が入れ替わって重なって、ほんとはどれが現実なんだっけ、とマルホランド・ドライブ化していくのですが、不思議なカンどころで組み合わさっていて、なんか面白いのです。

どこにいても普通で、誰と居ても普通に見えるこの主役の田中哲司、いいなぁ。
麿赤児は実は園作品の常連となっているのですね。
オダギリジョーがまた強烈にうざい女衒めいたあんちゃんの役で「ぜんっぶ金星人のせいですよ」が口癖。・・・私、この人悪役のときのほうが好きだわ。

この人の映画の主人公は、複雑になってくると、だーーーって全速力で走るんだな。自転車に乗ってたり乗ってなかったり。その過程で余分なものを振り落として精錬されていく。

面白い変な映画を撮る監督ですね。