映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

レオス・カラックス監督「ホーリー・モーターズ」329本目

ベッドで男が目覚めて、壁紙を破ってドアを開けるとそこは人生という名の(←ここ私による脚色)映画館。
映画のなかでは、朝どこかの家で起きて、巨大なリムジンのお迎えの車に乗って、それから指示に従って9つの「アポ」を遂行していく。アポは汚れ役ばっかりで、足の悪い老婆に始まり、次はモーションキャプチャーのアクション役者、3番目は緑色の服でマンホールから出てきた異常者、スキンヘッドの殺し屋、銀行家を撃つ男、娘をパーティに迎えにいく説教好きな父親、アコーディオン奏者、高級ホテルで暮らす老人の最期、そして12時を回って最後はチンパンジー二匹と暮らす家で終わり。

その後で自動車どうしが会話を始めるのは無駄じゃないか?
人はいろんな人生を生きたがる、というか、演じるというのはそういうこと、か。
輪廻転生にしては、1日に9回は多い。ヨーロッパでは猫は9回生きると言われているらしく、生まれ変わりの回数は9回というイメージがあるのかもしれません。

しかし、ここまで奇妙きてれつな映画を作りきるのはすごいです。まだ消化できてないけど、この先ずっと思い出しそう。

ところで、なかなか面白い音楽を使ってます。この監督はかなりのこだわり者と見た。
緑色の変質者のときにゴジラのテーマ曲、娘を送るときにスパークスのHow are you getting home?、カイリー・ミノーグが出演してるのはCan't Get You Out Of My Headを使うことを先に決めたんじゃないのかな〜?この曲なんか別の映画でもメインに使われてなかったっけ?オムニバス形式の…。

とりあえずこの監督の昔の作品も見てみようと思います。