映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

堀川弘通 監督「黒い画集 あるサラリーマンの証言」649本目

1961年作品。
当時の東京の風景や、オフィスの様子、サラリーマンの生活を覗き見るようでわくわくします。
私が生まれる少し前、父がこんなサラリーマンだったんだな〜と思ったりして。

しかしストーリーは黒くて苦い。これを見て藤子不二雄A先生は「笑うせえるすまん」を描いたのかしら。最初は「よくある話だわ」とか思いながら見てたけど、80分を過ぎたあたりにどんでん返しがあります。
怖い話だ〜。浮気はいけませんよ、脅迫もいけませんよ、という強い教育的効果を感じるほどです。今だったら、証言者のプライバシーは守られる、というような取引もあったりするんじゃないかと思うけど…。
…などと、完全に感情移入してしまうほど、実際にいそうなちょいワルサラリーマンを、小林桂樹がリアリティたっぷりに演じています。

そして結末は、追い詰めすぎずに、最後の最後にふーっと息を抜くような安心感を含ませています。このサジ加減、なかなかいいですね。今の映画では見たことがない、この感じ。

おもしろい映画でした。中北千枝子の、普通でちょっとだけ威圧感のある妻もよかったです。