映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

佐々木昭一郎監督「川の流れはバイオリンの音」804本目

夢の島少女」から7年後、やわらかく美しく成長した中根幸世が、イタリアのさまざまな土地をおずおずと訪ねます。ロードムービー、とも言えるのかな、この監督の作品は。

目力が弱まってはいないけど、ずいぶんやさしい、微笑むばかりの子供のような女性に育ちました。外国にひとりでやるには危なっかしい。ただ、その微笑みは一種のヨロイのような、ナイーブな心を守るもののようでもあります。映画のなかで彼女が描く絵はとても写実的で正確。彼女が弾くピアノは美しく豊か。

自分が彼女になって旅をするような映画で、感情移入をしやすく、流れるように心地よい。
というのは、もしかしたら監督がラジオドラマ出身だということの影響もあるのかな。

…でも、ちょっと微笑みすぎ。これが日本で日本語だったら、こんなに微笑まないんじゃないのかしら。
このアルカイックなスマイルで、彼女は自分が神秘的で不可解なものになっていると気づいてないんだろうか。
もう少し子供だったら、まだ微笑みのヨロイは身につけていなかったかも、と思うとちょっと惜しいです。