映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アラン・J・パクラ 監督「ソフィーの選択」1493本目

思ってたのと全然違う映画だった。前情報なしで見るのってやっぱりいいですね、驚きがあって。
公開当時それなりに評判になったし、メリル・ストリープ出世作といっていい作品だと思うけど、美しい女性が二人の男性の間で揺れる・・・みたいなロマンチックな作品だと思ってました。(間違い、ではないけど)

いろいろな要素、いろいろな“選択”がある映画だけど、もしも一言で言わなければならないとするとやっぱり「ホロコーストに巻き込まれたポーランドの美しい女性の、戦時中とその後の迷いと決断の物語」、ということになるんだろう。
ホロコーストを扱ったむごい映画はほかにもいくつもあって、最近だと「サウルの息子」でショックを受けたけど、ソフィーに突きつけられた選択はサウルすら求められなかったもので、もっとソフィー全体をむしばむような大きな影響があってもおかしくなかった。たとえばこの選択のせいで精神を病むとか、別人格になってしまうとか。美しく優しいままアメリカに来て人を愛し愛されることもできた彼女はとても強い人だと思うし、映画のなかでの描き方はマイルドだとも思う。こういうのって時代を映すから、この時代にできた精一杯がこれだったのかな、という気もします。「僕の大事なコレクション」にも究極の選択を強いられた人々のことが出てくる(はず。映画も見たけど原作「エブリシング・イズ・イルミネイテッド」の印象が強くて)けど、そっちのほうが選択者のその後の人生が過酷に思えた。

たぶんこれは外国だけの話ではないし、戦時中だけの話でもなくて、どっちに転んでも
獄じゃん、という究極の選択で、あなたはどうする?という問題なのかもしれません。逃げて自分がやられるか、明らかに間違っている選択をして一生さいなまれるか。

アンダーグラウンド」とかは最後の最後にカタルシスのような夢のようなものを描いて見せてくれたし(←ネタバレってほどじゃないよね?)、この映画でも2人の表情は安らかで美しい。誰にでもそういう場所が最後にはある、と思えたらいいな・・・。