映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マクシミリアン・シェル監督「初恋」2263本目

かの有名なロシアの作家ツルゲーネフの「はつ恋」の映画化。ほかにもいくつもありますが、これは1971年版で、ジョン・モルダー・ブラウンとドミニク・サンダが演じています。「早春」を見たらこっちも見たくなりまして。

少年はやっぱり初心だけど、こっちのほうが社交的で表情豊かです。

少女はその後のたくましい姿をまだ見せず、可憐だけど強い妖精、といった感じ。これは惚れるわ。

でもこの年頃の女性なら、年上のダンディな男性にときめくだろうな。かわいい少年よりも。まだまだ、こんな子たちが子犬と同じように可愛く思えるだけの世代だと思う。

映画全体は、ある意味難解。誰が誰を好き、とか、今うまくいきそうなのかダメなのか、ということは言われなくてもわかるけど、何の説明もないので、イメージ映像のような感じ。この映画では、少年の心の動きとか痛みとかより、彼が感じていたときめきや感動をそのまま映像にしようとしたんだな。だから私たちは、素直に眺めて「きれい・・・」とぽーっとしてるのが正解なんだわ。

少年の家で家族が食事をとる場面のカメラが異常に引いてる。広い部屋の一番奥の隅にテーブルを置いて、たった3人で固まってご飯を食べる。誰が誰かわからないくらい、カメラが遠い。ぬくもりのない寒い食卓。カメラはしじゅう、少年を大きく映す。

何もない静かな毎日。恋愛くらいしか心躍るものはないんだろうなぁ。痛みもあるけど、受け身なだけの初恋。自分が女性を泣かすのはまだだいぶ先。傷つけられただけで、自分はまだ加害者じゃないから、初恋ってのはいくつになっても甘いんだろうな。

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