映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジェームズ・アイヴォリー 監督「最終目的地」2384本目

シャーロット・ゲンズブールにアンソニー・ホプキンスに真田広之で、舞台はウルグアイとは、あまりにインターナショナル色が強いし個性がばらばらで…、何このキャスティング?作家の妻も主役の伝記作家も、全員集合しても接点がありそうな、カップルになれそうな組み合わせが一つもない。

それが狙いなのか。ってことに気づいたのは、他の人たちの感想を読んだ後です。きっと英国人アイヴォリーが、南米のマジック・リアリズムあふれる土地で、普通では起こらない化学反応が彼らの間で起こることを期待したんだろうな。

と言われても、シャーロット・ゲンズブールのロングブーツもローラ・リニーの力んで襟を立てた勝負服も、この土地で長く着てきたものと感じられない。監督も撮影も褒められてるけど、スタイリストにちょっと“無理”がある。そうやってずっとここで、まるで高級ホテルで暮らすみたいに、メイドもいないのに暮らしてきたっていうんでしょう?

しかしここでもアンソニー・ホプキンスの上手さ。彼のふるまいは、南米のゆるさをしっかり身に着けてる人みたいだ。真田広之もそこで働く男としてそこにいる。ニューヨークから“蜂に刺されて昏睡状態”の伝記作家を訪ねてきた彼女役のアレクサンドラ・マリア・ララはKINENOTEではクレジットもないけど、停滞だか安定だかのウルグアイの空気をかき混ぜる大事な役です。

最後の場面。作家の元妻は新しい男性とオペラを見に来ている。伝記作家の元彼女も同様に新しい男性を連れてその場にいる。どちらもニューヨーク在住だ。そしてウルグアイの家ではおそらく、作家の兄&養子、作家の元愛人と伝記作家が今も暮らしている。

しかし、せっかくのウルグアイにもかかわらず、辺境感とか魔術とかが全然なくて、英国連邦の支店みたいだったのはちょっと惜しかったです。 

最終目的地 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • 発売日: 2014/06/11
  • メディア: DVD