映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

シドニー・ルメット監督「評決」3119本目

これもずっと見たかった作品。評決、verdictということは判決ではなくて陪審員が全員一致で下す結論ってやつですね?

冒頭、ダリオ・アルジェントの映画みたいに真っ赤な装飾文字でタイトルが表示される中、今はもう見かけない「ピンボール台」をガチャガチャ揺らしているポール・ニューマン弁護士。ほかにシャーロット・ランプリング、ジェームズ・メイスン、というスリリングな面々。

しかし、主役を誘惑するシャーロット・ランプリングはクールビューティすぎて、”色仕掛け”って感じがしないですね。この二人の組み合わせがなんとなくピンとこない。

ダメ弁護士ポール・ニューマンが社会派として立ち上がって戦う相手は、一流の大きな弁護士事務所のジェームズ・メイスン。この人は悪い役もうまいですね!知恵の回る、勝つためにできることは何でもやる弁護士です。

法廷ものの映画ってこの前にも後にもたくさん作られているので、この作品はとても地味に見えます。でも、地味だからこそ、看護師を諦めてニューヨークで暮らしている女性の証言や、有能そうな老黒人医師の証言の本当らしさがだんだん光ってきます。

最後の最後に、シャーロット・ランプリングのクールな表情の下に熱い感情が隠れていたのかな、と思わせる、鳴り続ける電話。ポール・ニューマンが受話器を取らないまま終わるのが粋ですね…。

最近VODばかり見てるけど、監督と主演による音声解説が入ってるのとか、DVDレンタルの魅力。これを通しで見たら、この作品の前半があえてダメ弁護士の狡さに終始し、後半へと盛り上がっていく正義の真摯なドラマだということや、どれほど細かい演出が行われたかが伝わってきて、感動2倍になりました。

(以下結末にふれます)コピーに証拠能力がないと裁判長が言ったにもかかわらず勝訴したのは、これが陪審員裁判だったからかな。従来の裁判でもこういう明らかな事実に従って判決を下すための理屈を、うまく探せる人が裁判官だといいけど、なんて思いました。

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