映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ギレルモ・デル・トロ 監督「デビルズ・バックボーン」2588本目

ペドロ・アルモドバルが製作、ギレルモ・デル・トロが監督のダーク・ホラー・ファンタジーです。

「オール・アバウト・マイ・マザー」のポスターでおなじみマリサ・パレデス。彼女はシリアスな感じがあって、コメディ色の強い初期のアルモドバル作品には出てないけど、この映画の雰囲気は盛り上げてくれます。

いたいけな少年が見る不吉な幻。不幸な子どもってどうしてこう美しくて心を惹きつけるんでしょう。そしてスペイン語圏の映画ってどうしてこう、じわじわっと魅力的なんでしょう。

内戦というのは味方だと思っていた人同士が殺し合うということで、この頃のスペインには暗い死の匂いが満ちていたのかもしれません。

最後まで見てしまうと、怖いのは幽霊なのか人間なのか…。頭にひびの入った青白いあの子のお話を最初にちゃんと聞いておけば、と悔やむ気持ちになります。ナイトメア・ビフォー・クリスマスに出てきそうでだんだん可愛くなってきます。

トロ監督の映画の主役は本当に骨の髄まで純真なんですよね。映画黎明期にリリアン・ギッシュが演じてた役みたいに。そして悪辣な奴らはとことん悪い。そういう世界の善悪のありかたより、完全に透明な魂の美しさに魅了されるのがトロ監督なんだろうな。

見終わったあとに、切なくて少し苦しくて、でも心の中のおりが全部きれいになったような気持ちになるのでした。