映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

オダギリジョー監督「ある船頭の語」2670本目

ちょっとびっくりするくらい美しい画面。と思ったら撮影監督はウォン・カーウァイの一連の作品の撮影監督だったクリストファー・ドイルですって。オダギリジョーってどんな映画を志向する人なんだろうと思ったけど、まずこういう美しさをとても重視する人なんだな。まるで葛飾北斎の浮世絵みたいに、惑星ソラリスの最後に出てくる水みたいに、重い質感のある水の風景。

公式サイトにロケ地のこととかちゃんと載ってますね。新潟かぁ。行ってみたいな。

映画好きならおなじみの個性派俳優めじろ押しなのは、監督がまっさらな役者たちに演技を付ける自信がなかったんだろうか?これほどイメージ通りなキャスティングってなんか「借景」って感じがします。

冒頭のタイトル画面の左に、真っ赤な椿の花から大きな血の染みが広がっていく。椿の花を少女になぞらえると、これがストーリーをそのまま表してるとも言えます。謎めいているけどテーマは「ボルベール(ペドロ・アルモドバル監督)」と同じともいえる。あっちは開き直って底抜けに明るいけど、日本ではそれはひたすら悲しいこと、不幸なこと、として描かれるのが、監督がせっかく若いのにちょっぴりステレオタイプな気がします。夢とうつつを行ったり来たりする場面が中盤以降にたくさんありますが、少年に説明をさせようとしてかえってわかりにくくなってるような。いろいろ、生煮えな部分があるけど、次の作品も楽しみにしたいと思います。

美しい風景の中に一人で座ってるのって、私から見ればすごいことだけど、あの風景の中で生まれ育った人にとってはどんな感じなんだろう。都会の喧騒を夢見たりすることもあるんだろうか…

ある船頭の話

ある船頭の話

  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: Prime Video