映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョン・アルパート監督「カメラが捉えたキューバ」2739本目(KINENOTE未登録)

Netflixがリコメンドしてきたので見てみました。NetflixにしてもAmazonにしても、リコメンドしてくる作品は「ほかで既に見た作品」が多い。ということはかなり正確なリコメンドをしてくれてるってことだ。

原題は「Cuba and the Cameraman」、監督(兼ジャーナリスト)の名前はジョン・アルバート。VODで見るとそういう大事な情報が全く見えないのが困るな。ググれば出てくるけど、監督の名前くらいはリスペクトして表示してくれないかなぁ。さらに言うと、オリジナル・プロデューサー&カメラとして「ケイコ ツノ」という日本人女性らしき名前が出てきます。ググると、ジョンの奥さんで、一緒にニューヨークでDowntown Community TVという独立テレビ局を設立したそうです。このドキュメンタリーもそこが制作会社になってるみたいですね。もっとこういう情報が見てみたいんだよなー。

さらにググると、彼女は津野敬子さんという東京出身の日本人で、Japansese Americanのドキュメンタリーなんかも撮ってます。2003年に「ビデオで世界を変えよう」という本を日本で出版していて、最寄りの図書館にもあったのでさっそく読んでみようと思います。

さて。2016年末のハバナは、(今でも)物資が足りないけど、モヒートやアイスクリームがすごく美味しくて、素晴らしい風の吹く穏やかな優しい街でした。このドキュメンタリーで映してきたキューバは1980年代、1990年代、2000年代、と様々な時代です。

喉頭がんで声を失ったおじいちゃんにアメリカ人ジャーナリストが発声器をプレゼント。フロリダ半島の目と鼻の先なのに、ここまでの現金収入の差。

フィデル・カストロへのフレンドリーな突撃インタビューの数々は、驚きですね。「米国民は勤勉ですばらしいものをたくさん作りだしてきた。がんばってほしい。でもアメリカ政府と私たちに共通点は何もない」というのはもっともだし真っ当だ。きっと身近な人たちから慕われてきたんだろう。キューバの物資が不足するようになったことに対して、彼の政権の発足は遠因でしかない。キューバと通商している数少ない社会主義国のほぼすべてが経済的に豊かじゃないことは、社会主義のたどるべき帰結とみなす時期にもう来てるのかもしれないけど。

いやー、素晴らしいドキュメンタリーでした。政治に触れる部分もあるけど、主に時代時代の情勢に振り回されてきた普通の人たちの暮らしを映してきているので、じんわりと人々の気持ちが伝わってきます。いい仕事してます、ジョンとケイコさん。