映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルネ・クレール監督「そして誰もいなくなった」2788本目

<ネタバレあり>

アガサ・クリスティの名作のひとつと数えられる原作を、出版(1933年)の12年後の1945年にアメリカで映画化したもの。クリスティはかなり読んだけど、書かれたのと近い時代の映像は初めてだし、「テン・リトル・インディアンズ」のメロディを聴くのも初めて。こういう映画は、冬休みの夜長にゆっくりと見るものですよね。

孤島を舞台とした密室もの、犯人不明のまま全員が殺されてしまうという設定。ミステリーの類型のいくつかがここで作られたという、歴史的名作です。

全員が殺されるべき人物であるという点で、全員が一人の人を殺す動機を持っている「オリエント急行」と真逆。映画化したのはフランス人のルネ・クレールだけど、彼もまた第二次大戦終結を待たずしてハリウッドに移ってたんですね。

今見られるのはAmazonプライムだけだけど、画質が悪いですね~。これでなければYouTubeで字幕なしの動画を探すしかなさそうなので、しょうがないか。

演出がきわめてシンプルで、人がどんどん死んでるのに「ええっ!」とか「きゃあ!」とか「おおっ!」といった感嘆詞を上げる人もおらず、ひたすら淡々と日常を過ごしてるのが不自然なくらいです。今はどんな国で作ってもこういう、事務的といっていいような演出は、ないな。死に対する根源的な恐怖をもたないかのような出演者たち。。。

するすると映画は進行し、犯人は…ていうか3人が2人になったところで幕切れ。あれ、原作と違う。…戯曲版がベースなのかぁ。小説の方がスリリングなんだけどな。

ちょっとがっかりしたけど、そういうもんか…。