映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ギャレット・ブラッドリー監督「タイム」2954本目(KINENOTE未掲載)

アマゾンオリジナル作品。

若くてばかだったときにやってしまった銀行強盗で60年の刑を受けた夫。60年ってほぼ「一生」だ。息子が定年を迎えてしまうほどの年月。妻は車で待っていて3年半ですんだ。白黒だとふしぎなくらい時間を感じない。本人たちが撮った映像とプロが撮った映像が切り替わったりしても、映像の質の違いも感じにくくなってる。なんといっても「本当」の人たちを撮った本当の映像の強さだな。

しかし、彼女の夫が置かれている状況がいまひとつ正確にわからない。夫が有罪判決を受けたとき、ジャスタスとフリーダムという双子を身ごもっていた。それより若い「末っ子のロバート」が18になるまでに…って言ってたけど、収監後にできた子?刑期は短くならないけど、ときどき仮釈放があるってことなんだろうか。Wikipediaには「6人の子供の母親」って書いてあって、2018年に釈放されたっぽいのでその後にまたできたのかな。頭の中が「???」ってなってる。

妻の強さ、…「私はひどいことをしてあなたを傷つけた、許してくれ」と親や周囲の協力者たちに謝らずに長年やってきたという指摘があった。彼女は常にあまりにも堂々としていて、日本だったら完全な冤罪でも擁護者は「すみません、ご迷惑おかけします」と謝りがちなのを思い出してしまう。つまり日本は差別されてこなかった「普通の人」でも、一度疑いをかけられたらそのことによって被差別者となって、もしかしたらこの映画の夫のほうよりひどい目に合ってきてるってことか。疑われてつかまる理由もわからず、どうやって逮捕や差別から逃れればいいんだろう。

 60年という冗談か嫌がらせとしか思えない長期の罰が存在するアメリカはどうかしてるし、そんな刑を受けるのは黒人だからというのもありそうなことだ。そんな刑罰は間違っている。でも日本のほうが、警察も司法も下っ端から上のほうまで、どこを責めればいいのかわからないくらい、もやもやと崩れている気がして、あらためてそっちの怖さを実感してちょっとイヤな気持ちになってしまいました。

タイム

タイム

  • 発売日: 2020/10/16
  • メディア: Prime Video