映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ハワード・ドイッチ 監督「プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角」3692本目

1986年の作品。

映画を見たのはそれよりだいぶ後だけど、当時リアルタイムで貸レコード屋(!)から借りたLPレコード(!!)をカセットテープ(!!!)にダビングしてヘビロテしたものです。OMD、Echo & The BunnymenやThe Smithsなんかは特に聴きまくったな。

モリー・リングウォルド演じるアンディのファッションは、当時アンアンを愛読して文化服装学院に進学するタイプの子という感じで、田舎の女子高生にはまぶしかったなぁ。マドンナになりたい「ワナビーズ」にもちょっと似てるけど、フィロソフィーとしてはその後の日本の「シノラー」や「ガングロ女子」にも通じる、ファッションによる自己主張。お金はなくてもセンスと頭で日々輝いてる女の子たちが、今もまぶしいです。

一方アンドリュー・マッカーシー演じるブレインは王子様感すごいですね。何不自由なく育って自己肯定感100%だけど、退屈な富裕層の日常に飽き飽きしてる。女子高生の私は彼に憧れるけど、彼はアンディみたいな目立つ素敵な女の子と仲良くなって、私は失恋・・・というイメージが勝手に浮かんできます。

スザンヌ・ヴェガやバニーメンの曲はどこでかかってたっけ・・・?思ったほど「音楽映画」ではなくて、いまこうやって映画を見直してみると、すごくオーソドックスなシンデレラ・ストーリーですね。一方、アンディの父がハリー・ディーン・スタントンだったり、彼女のバイト先のオーナーがゴーストバスターズのおかしな事務員アニー・ポッツだったりすることに今なら気づいたりします。「Try a Little Tenderness」を口パクするときのダッキーはリトル・リチャードに見えてちょっとカッコイイ。

最後は、無事愛する人とプロムに行く・・・っていう気持ちのいい終わり方。格差社会を乗り越える、というより、賢くてセンスのいいアンディが貧しい世界を抜け出して、富裕層だけど自由な心の持ち主の彼と新しい時代を切り開く・・・というイメージですかね。