映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

チャールズ・ヴィダー 監督「カルメン」2550本目

リタ・ヘイワースといえば、米兵が兵舎の部屋の壁にピンナップを張り付けてるというイメージ。これは第二次大戦後すぐの1948年の作品。彼女はブルネットの色白でぶっちゃけジプシーには全然見えないし、フラメンコはスペイン人が見たら怒るだろうという適当さだけど、男がみんな振り返りそうな明るくてさらっとした色気が素敵です。

リタ・ヘイワースについてググって驚いた。彼女の本名はマルガリータ・カルメン・カンシ―ノ、アメリカ生まれだけどスペイン系で本名がカルメンとは。見た目はゲルマン系の美人って感じなのにね。

一方、堅物の兵士を演じるグレン・フォードは、誠実そうな魅力がいっぱい。そしてカルメンに入れ込んで道を踏み外していく。昔の映画って「嘆きの天使」なんかもそうだけど、悪い女に入れ込んで破滅する純情な男のお話が多いですね。これは多分映画を作ってたのが男だけだったから、男性目線の被害者的発想なんだろうな。「悪い女」ってたいてい貧しくて親に売られたり、もっと悪い男に囲われたりしてた不運な女ばかりで、今のハリウッドでは彼女たちの方がかわいそうな人々だからね。古今東西の映画なんでも見てると、もはや善悪の設定はどうでもよくなってきて、映画としての魅力のほうを重視するようになってきましたが…。