映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「セクシリア」2558本目

(ネタバレあり)

アルモドバル監督の常連、セシリア・ロス。「オール・アバウト・マイ・マザー」であんなにド迫力を見せた彼女もこのときはまだ20代。イケイケのセクシー美女です。ネーミングが愉快ですね、セクシーなセシリアだからセクシリアって名付けたんだよねきっと?

アルモドバル監督の作品には、女性の性と生をど真ん中に据えたものがとても多いと思います。その中で、ヒロインは代替わりします。「ボルベール」はとうとうDVDを買ってしまったんだけど、特典映像に出演女優たちの座談会があって、マウンティング合戦がすごくて面白かったです。「ボルベール」のヒロインはもちろんペネロペ・クルスで、死んだと思われていた老婆役でカルメン・マウラが出ているのですが、そのカルメンが座談会で「今回はペネロペがペドロのヒロインだけど、昔は私だったのよ」。確かに「神経衰弱ぎりぎりの女たち」や「欲望の法則」では彼女がヒロインでした。この「セクシリア」のヒロインはもちろんセシリア・ロスなんだけど、彼女はオバちゃんになってから「オール・アバウト・マイ・マザー」で大逆転ヒロインに返り咲くのです。なんか面白いなぁ。

アルモドバル監督の映画につきものの、父が娘を犯すというテーマがこの映画でも繰り返されています。セクシリアは被害者の娘を真剣に助け出します。

ドタバタのなかでいろんな事件が起こって最後うまーく終息するのが彼の映画なのですが、この映画に限っては、最後の最後に皇太子を一緒に飛行機に乗ったはずのセクシリアが、実父とベッドインしているという、映画の趣旨と真逆に思える結末を迎えるのです。飛んでいく飛行機のなかから怪しい喘ぎ声がしていて、あれこの二人あの機内なの?いつパパまで飛行機に乗ったんだ?という、つじつまの合わない結末なんですよ。うーむ、どうやって頭の中の決着をつければいいのか…。

セクシリア(字幕版)

セクシリア(字幕版)

  • 発売日: 2017/03/08
  • メディア: Prime Video