映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

スティーブン・スピルバーグ監督「ジョーズ」3727本目

<結末に触れてますが、昔の作品だからいいよね?>

U-NEXTで「ハリウッド映画の一世紀」っていうドキュメンタリーシリーズを配信していて、~1950年代、60年代、70年代、80年代、90年代、2000年以降という6回に分かれているのですが、これが映画好きの魂に響く素晴らしいシリーズなんですよ。監督や主演俳優が多数インタビューに応じていて、見ていると「そうだよねそうだよね、ああやっぱり彼らもこの監督、この俳優が好きなんだ、あの映画にシビれたんだ」といった共感で胸がいっぱいになって、昔見た名作を改めて見直したくなるのです。これ、U-NEXT加入してる映画好き全員に見てほしい。なんならこれを見るために、30日間無料体験やってほしい。(回しものじゃないですよ!)

スピルバーグの出世作がどれほど卓越していたか?1975年っていったら、私好みのB級低予算ホラー映画や「タワーリングインフェルノ」みたいなパニック映画がたくさん作られた時代。当時、怖そうなので映画館には行けなかったけど、何度もテレビで放送されたのを見て震えた記憶があります。

冒頭から、さすがユニバーサル、タイトルのフォントや配置は当時っぽくあまりにもシンプルだけど、画面が締まっていて隙がありません。主役の(「オール・ザット・ジャズ」の)警察署長ブロディをスマートなロイ・シャイダーが演じている、というのが大きいですね。

血は流れるけど、スプラッターではなく残酷描写もない。その辺もスマート。危機感のないお偉方や一般市民、二人目の犠牲者。すっと場面は変わって対策会議室・・・といった場面転換もスマート。

危ない!いや大丈夫。危ない!さらに危ない!どうやら大丈夫。・・・緩急つけますね~。ただ、私の場合、その後サメとの大決闘に至るまでの流れがちょっぴり退屈にも感じられてしまったのは、その後もっと思う存分やりきったスピルバーグ作品をたくさん見てしまったからかな?

警察署長、荒くれ者の海男、海洋学者の3人対巨大ザメの大決闘の場面、息をのむ迫力だけど、今見るとサメのハリボテ感がぬぐえないのと、そもそも逃げればいいサメがなんでこんなにしつこく攻撃してくるのか、という理由が薄くて(最近の映画では動機が丁寧に描かれるものが多いので)逃げてくれサメ、という気持ちになって見てしまいました。(ああ、なんて嫌な観客)

この作品、「白鯨」であれば死闘の末に勝つ”海の男”が、ここでは身勝手な闘争心で結局は身を滅ぼして、知性派の警官と海洋学者が生き延びる点も興味深い。これがやがて、○○が生き残る「エイリアン」などの作品へとつながっていくのかな。(さすがに、何の関連もない作品の結末をそのまま書くのはためらってしまった)

「タワーリング・インフェルノ」みたいに俳優を”見に”行く作品じゃないんですよね。テーマパークの体験アドベンチャーみたいに、出演者と一体化して叫んだり笑ったりする作品。その辺の巻き込み方が、スピルバーグは圧倒的なんだな。

面白かったです。