映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アキ・カウリスマキ監督「愛しのタチアナ」3749本目

わずか62分の作品だけど、たっぷりとカウリスマキ監督の世界を味わえます。

いつものマッティ・ペロンパー(アル中)とカティ・オウティネン(エストニアからの旅行者)に加えて、レニングラード・カウボーイズのマト・ヴァルトネン(コーヒー中毒の仕立て屋、母親を納戸に閉じ込めてプチ家出中)と大きなロシア女性キルシ・テュッキュライネンが加わります。タリンへ渡る船の乗り場まで、女たちは男たちの車に乗せてもらうんだけど、途中でつごう3泊?。どんな田舎町から移動してるのか、と思うけど、これもまた「カラマリ・ユニオン」みたいに、実際は徒歩3時間くらいの距離だったりするのかもしれない。

男たちも女たちもあんまりパッとしないこの雰囲気、なぜか「ファーゴ」のスティーヴ・ブシェミとウィリアム・H・メイシーが「オー、イェー」ばっかり言う女の子たちをナンパした場面を思い出してしまう。北欧だとこうなるのか。男たちはイキがってるけど、女たちからは「あの間抜け面の男たち」「面白い顔の人たち」と思われてる。(でも女たちは平気で彼らの部屋に着いていく)

全然愛があるようには見えなかったマッティとカティは、彼女の家で一緒に暮らしましたとさ。そしてマトは家で(いつの間にか納戸から抜け出していた)母のいる部屋でミシンを踏み、ひとり帰りのフェリーに乗り(時系列がこの辺からわからなくなる)・・・・かと思ったら、4人が乗った車がカフェに突っ込んだ、と思ったらそれはおそらくマトの妄想(帰りたくなかったから、事故でも起これば残れたと思ったのかな)で、帰宅したマトはやはりミシンをふみ母親はコーヒーを淹れる。

結局、国境を越えられた男と超えられなかった男のお話なのかな。フェリーには乗れたのにね。

港までの道のりは悪い夢のように長く遠く、帰りはあっという間で、もう家だ。そういうのがフィンランドの人の感覚なのかもしれません。

愛しのタチアナ (字幕版)

愛しのタチアナ (字幕版)

  • カティ・オウティネン
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