映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャック・ターナー監督「過去を逃れて」132本目

1947年作品。

「午前0時の映画祭」で見ました。
フィルム・ノワールっていうんだそうです。こういう映画。
ノワールっていうくらいだから、暗くって黒くってどんよりするのかと思ったら、起承転結のはっきりした娯楽大作でした。

ギャングの依頼をすぐ受けちゃう黒っぽい私立探偵にロバート・ミッチャム。ギャングのボスはカー区・ダグラス。一見清純っぽいけど極悪なギャングの女にジェーン・グリア。この3人のキャラが立ってて素晴らしいです。

もと軍人、ボクサーのミッチャムはガタイが良いけど、“スリーピーアイ”って呼ばれてたらしい優しい目元をしてて、強いけど優しい・パワフルなのにニヒル、っていうちょっと複雑で引き込まれるような魅力的な俳優さんです。カーク・ダグラスは本当にいそうな、回転が速くて人当たりは明るいけど短気で冷酷な悪役。ジェーン・グリアは、かわいいし嘆願の表情が真に迫ってるだけに底恐ろしい悪女。まったく信用ならない女なんだけど、あまりにチャーミングで、男なら誰でもコロっといっちゃうだろうな〜と思ってしまいます。

ノワールだとかニヒルな私立探偵ときくと、最近のその手は女をデザートか何かのように食べ歩いてまったく情を見せないことになってるように思いますが、翻弄されてしまうところが人間みがあります。それに・・・元ボクサーの俳優といえば、今ならたぶんターミネーター的な映画に駆り出されて、こういうドラマに起用されることはない、と思う。その辺が、今の私たちにはますます魅力的に感じられる映画でした。以上!